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11月27日
私は、忘れない。
場所、匂い、音。着ていたブラウスは最後にしようと思っていたけれど、畳んでとっておくことにした。
それほどに、心が震えた。嬉しかったんだ。
「一緒にいると、すげー落ち着く」
だからさ
「結婚...前提に、一緒に住まねえ?」
どれほど深く、何度頷いたか、わからない。
気付かぬうちに溢れた涙に、2人で大笑いした。
借りたのは、家賃重視のアパート一室。ベランダの日当たりがよくなかったのか、Tシャツが生乾きだ。
「ちょっと!」
「なに?」
呼ばれたので、洗濯を途中に渋々部屋に戻る。私が新調したのは、花柄がポイントのカーテンとカーペットだ。
「どしたの?」
寝室を覗き込むと、折りたたみベッドの箱が潰されていた。ネジと説明書が、床に散らばっている。
あんまりクッションは良くなさそうね...という本音は、呑み込む。
「やっぱりこれ、邪魔だわ」
ぺちぺちと叩いたのは、私が持ち込んだドレッサーだ。1人暮らしを始めるときに親に買ってもらった、思い出の品だ。
「そんなこと言わないで。リビングがダメなら、他に置く場所がないんだから」
「ベッドを寄せたら、クローゼットが開かないんだよ」
「じゃあ、ベッドを畳めばいいじゃない」
「起きる時間が違うのに?」
夜勤の多い彼とは、就寝時間も違う。
「使ってるなら仕方ないけどさ」
「使ってるわよ」
「中身ほとんど入ってないだろ。化粧だって、洗面所独占してるくせに。長いんだよ」
「鏡がおっきくて便利なの!」
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