サングラスと兄

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「あそこが結花の家か」 大きくて、庭の手入れもされていて きっと温かい家庭なのだろう。 暖かい部屋で温かいご飯 そして笑いの絶えない家族。 俺が小さい頃に育った ボロボロで足の踏み場が無くて 酒とたばこの臭いが充満していた家と 正反対だ。 お兄さんの結花への愛情は 少し異常な感じもするけど それだけ、結花のことが大事なんだろう。 俺に対してもあたりは強かった。 だけど、それでいい。 それぐらいのほうが これから先、結花にどんな男が近づいても お兄さんの目が黒いうちは 寄せ付けることはないだろう。 「ふっ……本当、黒い」 何でおれはこんなにも汚くなってしまったんだろう。 人の欲、嘘、だまし合いに駆け引きを たくさん見てきてしまっているから。 これだけ汚れていたら 以前みたいに綺麗になることはできないだろうけど それでも、少しは綺麗になりたい。 結花のそばにいれたら、それが叶うんじゃないかって思うんだ。
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