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体育委員、文化委員、保健委員、美化委員と思いのほか次々と埋まっていく。廊下側の三番目の席でネイルの次はコテで長い髪を巻き始めた女子は、「マックー、風紀委員やりたぁい」と甘ったるい声を上げた。
「おい、それは無いだろ」
「個性って大事じゃん?風紀委員になってさぁ、カラーもエクステもオッケーにしてもらうー」
「してもらうーって、お前は注意されても勝手にやってるだろ。それに、そんなもんオッケーにするわけ無い。とりあえず、そのピンクの毛、取って来るように」
「げっ、言わなきゃ良かったあ」
どこか幼さを思わせる顔立ちの彼女は、金髪のなかにあるピンクのエクステを巻きながら「絶対やだー」と口を尖らせ、クラス中に笑いが巻き起こる。
橘さんみたいな派手な女の子も可愛いな。でも――。
今朝、トイレで会った女の子もとてもお洒落だった。美羽ちゃんだっけ。
「あとはクラス委員も決めないとなんだがなぁ。誰かいないかぁ?先生のお手伝いができるぞー」
クラス中から「えー、やだあ」「マックの手伝いなんて絶対むりー」と湧き上がる。このままいけばクジ引きだ。クラス委員の他に残っている中で、当たりたくないのは放送委員。学校中にわたしの声が反響してこだまするなんて。考えるだけで吐きそう。
「緋山」
突然、白井君がこちらを振り返った。手のひらを口元に当て、小声で身を乗り出しながら。
「クラス委員、一緒にやらない?」
「えっ――」
隣の列の生徒たちの注目が集まる。
なんだ、なんだ?
滅多に喋らない奴が喋ったぞ。
そんな心の声が視線から伝わった気がして、思わず身をすくめた。橘さんも気付いたらしく、ふわふわに仕上がった髪をはらい、隣の女子とこちらをちらり、と横目に何かを話している。
「嫌かな?」
「嫌じゃない、です。その、嬉しい……です」
「じゃ、決まりな」
白井君は親指を上げ、にっと笑う。
「先生、俺クラス委員やります」
「お、良い心掛けだ。感心感心」
「緋山も一緒にします」
教室がざわめく。「花子なの?」「えー、なになに?花子?何で?」「白井、いつの間に友達になってんだよー」と好奇の声や嘲笑が渦巻く。
「あー、推薦か?駄目だぞ白井」
「違いますって」
「緋山さん、嫌なんじゃない?絶対嫌だと思うよ、ほらめっちゃ不安そうだし。緋山さんシャイじゃん。白井君が休んだ時とかしんどくない?みんなに声掛けたりノート集めたり、意見纏めたり無理じゃん。わたし――」
橘さんが言いかけた言葉にかぶせるように、慌てて立ち上がった。わたしの小さな声を上げるより先に動いた方が早いと思ったから。
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