六月・紫陽花の湯

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 今年は梅雨にしては、雨が少ない。  …なんて言ってたら、急に毎日降り出すようになりました。どしゃ降りって程でもないけど、しとしと降り続いて嫌な雨です。 86850970-27b1-48a0-90ab-c4e1624af5b1  日曜日なので、朝からはたの湯の開業前に掃除とかの手伝いに来ました。最近銭湯代をおごってもらう代わりに、バイトの真似事のような感じで入り浸っています。  今日の潤くん、口ではお礼を言っているけど珍しくご機嫌斜め。雨の日は足の傷が痛むのと、それ以上に頭が痛くて仕方ないんですって。  「気圧の問題かなぁ?悪いな、無愛想で。見た目によらず、気圧だとか気候に弱くってさ」  いやむしろ、めっちゃ弱そうな見た目してますけどね。ってか絶対、朝とか弱そう。寝起きで、乱れる潤くん…。イカン、平常心!  「ご苦労さん。もう、これくらいでいいよ。これ、お礼な」  そう言って、売り物のコーヒー牛乳の瓶を渡された。風呂上りには格別だけど、こうして尊い労働の後に頂くのもなかなかの味だ。  「ごめんな。ちゃんとした、バイト代じゃなくって。こんなもんしか、渡せなくてさ。でも良かったら、婆ちゃんには内緒で…」  「い…いいよそんなの。潤くんの、大切なポケットマネーでしょ?お婆ちゃんの言うとおり、潤くん自身のために使って」  事故の慰謝料だか何だかで、潤くんの手元には高校生に不相応なほどのお金が残っている。かろうじて?変わり湯に使う植物は、潤くんの発案だからって毎月そこから出しているのだそうな。  あ、今月の変わり湯?ドクダミ湯ですよ。ごめんなさいね、タイトル詐欺で。潤くん、オレをタダ働きさせてるみたくて申し訳ないようだ。横柄に見えて、こう言うところ殊勝だよね。  「あ。それじゃオレも、そっち(潤くんが口つけた瓶)が飲みたいかなー。なんつって」  「こっち(フルーツ牛乳)の方がいいのか?お安い御用だよ、ほら」  そう言って、手に持っていた方の瓶を渡された。え。自分から振っといて何だけど、これっていわゆる一つの間接…。  「飲まないのかよ?てめぇから言っといて、思い切りの悪い奴だな。男らしく、グイッと行けや。グイッと!」  居酒屋の親父みたいな事、言い出した。幼少から爺さん婆さんに囲まれてるからだろうけど、言い回しがちょいちょい年寄り臭いんだよな。えぇい、ままよ!  「おぉ、いい飲みっぷりじゃねぇか。でも本当、コキ使っといてお礼がこれだけなんてのは気が済まねぇな。他に、して欲しい事はないか?オレに出来る事なら、何でもするから」  ん?今、何でもって言ったよね!?
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