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その民家の窓に止まった時、屋内に母娘が寝ているところが見えた。
その傍には、純白の結婚衣装があったのだ。
「そうか‥‥あした誰かと結婚するのか‥‥」
やがて黒トンボは、近くの木のてっぺんにヒョイっと停まった。
実に静かな昔の東京の光景を、こんなカタチで見れるとは‥‥とキモトは感激していた。
そこから見える夜空には、めくるめく星が輝いていて、キモトは昔の江戸の人々が嫉妬やましく思えた。
ただ‥‥下に広がる江戸の街の暗さには、呆然としてしまった。
「まぁ無理もないか‥‥。この頃の照明はローソクだけだだもんな‥‥。
しかし、この黒トンボは、オレの願望を読めるのか‥‥? 何故ならオレは以前から、江戸の街に興味を持っていたからなんだ‥‥」
彼は、巨大な黒トンボの背中をさすった。
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