11.

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「……まぁ、いずれは」 「今じゃ、ダメ?」 「俺、朱夏さんを苦労させない自信がないです」  何とも真面目な発言に、朱夏がくすっと声を上げて笑う。その後、「食べようか」と声をかける。 「……はい」  控えめなその返事に癒される。そう思いながら朱夏が皿を運んでいると、不意に玄関の扉が開いた。そして顔を見せたのは……いつも巽の側に居た人物。 「たつみ~。暇だし来た……って、うわ!」 「……千晶(ちあき)」  千晶と呼ばれた彼は、朱夏のことを見て目を見開く。その後「……もしかして俺、邪魔だよね?」と言って頬を引きつらせていた。 「……まぁ、邪魔、だな」 「そうですよね~、邪魔ですよね~。……今日は仕方がないし、俺、帰る」  しかし、彼はどうやらかなり空気が読める人物らしい。朱夏に一瞬だけ視線を移し「巽のこと、よろしくお願いします!」とだけ言って去っていった。……嵐のようだった。 「……何だったんでしょうか」  朱夏がきょとんとしていれば、巽は「……いつもあんな感じだから」と言ってテーブルの前に座る。 「気にしたら、負けですから」  巽のその言葉を聞いて、朱夏もテーブルの前に座った。それから、二人で朝食を食べていく。汗ばんだ身体は相変わらず気持ち悪いが、心は満たされていた。 (ずっと、ずーっとこうやって過ごせたらいいんだけれどなぁ……)  内心でそう思いながら、朱夏はオムレツを口に運ぶ。割と美味しく出来たんじゃないだろうか。そう思っていれば、巽は「美味しい、ですね」と声をかけてくれた。 「よかった」  巽のその言葉に、朱夏は安心する。  そして、朱夏と巽は大学を卒業後すぐに結婚した。ちなみに、朱夏の母は巽を見た瞬間「めちゃくちゃいい身体してる!」と歓喜していた。……それが、一番朱夏にとって印象的だった。
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