419人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
『そういや、昔は断られたな』
「え? 何が?」
『お前んちに住んでいいかって、前に聞いただろ』
言われてみれば、そんなこともあったような気がする。
確か、何とも言えない曖昧な関係の頃だと思う。
私の反応を見て、長瀬はどこか面白がるような顔をして質問してきた。
『お前、そのときなんて答えたか覚えてるか?』
「え? うーん、はっきり断ったのは覚えてるんだけど……」
『「絶ッ対に、嫌」』
「へ?」
思いっきり顔をしかめた彼は、さらに続ける。
『「ホントに嫌。本気で嫌。……あーもう、面倒くさいなぁ。早く帰ってよ、酔っ払い」』
明らかなモノマネをされて、ひくっ、と、頬が引きつるのを感じる。
……ああ、言った、なあ。うん、言った。確かに言ったわ。
しかも今長瀬が再現している通りに、全力で顔をしかめて……。
.
最初のコメントを投稿しよう!