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『ま、今だからこんな風に言えるんだけどな』
「何よ、めちゃくちゃ笑ってたくせに……」
『仕方ないだろ、あの時は笑うしかなかったし』
よく言うよ、ずっと余裕たっぷりだったくせに……。
言えない悪態を心の中で呟いてから、グラスを手に取った。
いつもこうして長瀬に負けてしまっている気がする。
なんだか悔しくてビールをぐっと飲み干した私に、長瀬が『ミオ』と呼びかけてくる。
『早く一緒に住みたいな』
「っ……」
画面越しの柔らかな笑顔に、何も言えなくなってしまう。
本当に、長瀬はずるい。
そんな風に素直になられてしまったら、からかわれて遊ばれてムカつくとか、負けっぱなしで悔しいとか……そんなの、どうでもよくなってしまうじゃないか。
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