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『まあ、仕方ねーから我慢してるけど』
「……うん」
全部、私の躊躇のせいだから、何とも言えないのが辛いところだ。
長瀬は、口は悪いけれど、優しいから私を責めない。
でも、こんな状況を招いたのは私のせいだって、私自身がよくわかってる。
もともと、恋人になって早々に長瀬が『一緒に住もう』と言い出して。
急すぎる展開に何だかついていけなくて断っていたら、付き合っていることを社内でさっくりバラされて。
抗議している間もなく両親に会ったり会わせてもらったりと外堀を埋められていって。
あっという間に社内でも親族内でもあとは本人たちにおまかせ、という状況になってしまって。
もたもたしているうちに、会いたい人にも簡単に会えない社会情勢になってしまった。
確かに長瀬とは同僚としての付き合いも長いし、それなりに気を許しあっていると思っている。
それでもやっぱり抵抗があったのは多分、自分自身の弱さのせいだって、自覚してる。
だって、一緒に住んでしまったら。
長瀬の存在が生活の一部になってしまったら。
もう二度とひとりには戻れない気がして、怖い。
……なんて。
未だに臆病でどうしようもない自分がいること、長瀬にだけは絶対言えない。
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