一生の罪

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 葬儀が終わり、息子は荼毘に伏された。息子の入った骨壷を抱いた瞬間に思ったことは「軽く、小さい」と言うことだった。私は「赤ん坊の時より小さく軽くなってどうするのよ……」と、思いながら膝を折り涙を流してしまった……  親戚連中を見送った後、私達は自宅のリビングルームにて一息をついていた。私は喪服のままお茶を淹れ、夫に差し出した。 「喪主の方、ご苦労さまでした」 夫は何も言わずにお茶を啜った。私も対面に座りお茶を啜る、味は相変わらずの砂の味しかしない。眠れなくなるぐらいに濃いお茶の筈なのに味がしないのは、精神的な問題だろう。お茶を飲み終えた夫が唐突に言い出した。 「なぁ、どうして自殺なんてしたんだろうな?」 これはもう遺書に書き記した通りとしか言いようがない。 私は沈黙でそれに答えた。口が開かなかったと言う方が正しいかもしれない。 すると、夫は信じられないことを言い出した。 「無職になっても図太く生きてるヤツだっているんだぞ? それがどうして…… 精神的に弱い甘えん坊に育ったんじゃないのか? お前、あいつ(息子)が一人っ子だからって甘やかして育てたんじゃないのか?」 そう、息子は一粒種だ。家族計画ではもう一人予定があったのだが、息子を産んで間もなくに早期閉経を迎え、二人目を望むことは出来なくなってしまった。それ故に私は息子を目の中に入れても痛くない程に可愛がってきた。子供が一人であればその分、お金をかけることが出来るため、欲しい物は何でも与えてきたし、あちこちに旅行に連れていくことも多かったし、習い事も息子が希望するものはさせてきた。 ただ、叱る時は叱っているために甘やかしているつもりは一切ない。 「いえ、そんなことは」 夫は机を叩きつけた。テーブルの上に乗っていた湯呑みが軽く跳ねて横に倒れ、木目に沿って転がり、床に落ちて破砕してしまった。 「俺だってあいつ(息子)は可愛い。お前が甘やかすのも仕方ないと思っていた」 「だから私は甘やかしているつもりは一切ないと」 「黙れ!」 「もしかして、私の育て方が間違ったと仰りたいのですか?」 「そうだ。自分の思い通りにならないと癇癪を起こすと昔から通知表に書かれていたではないか。小中高とずっとだ! それこそ甘やかされて育った子供の特徴だ! あいつが仕事をやめて家に戻ってきた時も変わってなくて驚いたぐらいだ。おそらくは社会に出た後も同じことを繰り返してきたのだろう」 私は首を横に振った。夫は再びテーブルを叩きつけた。 「ご近所に聞こえますよ」 私は夫を嗜めた。夫は気を落ちつかせるために「ふぅ」と溜息を吐いた。 夫は続けた。
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