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「それにだ。義姉さん達にあいつが亡くなった理由が自殺だって言ってないだろ? 俺、葬式でも何も聞かれなかったから不思議に思って義姉さん達に聞いてみたら『心臓発作で亡くなった』って言われたぞ? そんなに無職を恥じて自殺したって知られたくなかったのか!? 恥ずかしかったのか? 俺は全てを受け止めて義姉さん達にも説明するつもりだった!」
「やめてください!」
私は激昂し、夫に向かって叫んでしまった。頭の中は「あの姉達に息子の死の真相を知られたくない。恥ずかしい」と言う気持ちでいっぱいだった。夫は羞恥心で胸をムカムカとさせる私にトドメを刺しにきた。
「とにかく、もうお前の親戚付き合いにはウンザリなんだよ。そんなに親戚付き合いが好きなら俺抜きでやってくれ。俺、一人っ子だったから…… ああいうの苦手なんだよ。いい年して親戚同士でベタベタと…… 気持ち悪い」
「何もそんな言い方をしなくても」
「お前がいないと、天涯孤独の俺は多分孤独死になるだろうが、もうどうでもいい。あいつのいない人生なんか生き地獄みたいなもんだ。離婚して財産分与してもお前が老人ホームに入るぐらいの金はあるだろう。達者でな」
「そうまでしてまで、離婚したいのですか?」
夫はテーブルの上に置かれた離婚を一瞥し、軽く頷いた。
「そうでもなければこんなものを出さないだろう? 親戚同士の付き合いが面倒くさいし、そもそも価値観が違っていたんだ。今だから言うが、お前があいつを甘やかす様は気持ち悪いと思っていたんだぞ?」
私は思わずテーブルを叩きつけてしまった。
「何を言っているんですか! あの子の躾は全部任せるというから任せられただけです! それを気持ち悪いだなんて!」
「家にいるのは君じゃないか! 俺は帰りも遅いし、躾だってお前に任せただけのこと!」
この後は阿鼻叫喚地獄の大喧嘩。私は夫に自分を否定され続けた。夕方に始まったこの話し合いが天辺に差し掛かろうと言う時、やっとのことで私は離婚届に名前を書き、判子を押した。
全てが…… 終わった瞬間だった。
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