「趣味の部屋」で見たこと

2/3
前へ
/266ページ
次へ
 そう、電気もついていないのに、窓もないのに、部屋がうっすらと明るいのだ。グレーの厚めのカーテン。その向こうから明かりが差し込んでくる。いや、染み込んでくるというべきか。それは明らかに異様なことだ。だってカーテンの向こうは壁になっているはずなのだから。さっき私がこのみちゃんの愛撫により生まれて初めてオルガズムを与えられた部屋と今私が閉じ込められた部屋の仕切り壁。向こう側には大きな鏡が張られた壁。そこからどうして明かりが染み込んでくるのだろう。  違和感の正体を確かめたいあまり、怖いもの知らずになっている私。おそるおそる両手を伸ばし、カーテンを左右に割ってみる。 「え⁈」  とんでもないものを見てしまった。  何、この部屋⁈   女子高生の部屋にこんな仕掛けが……。  思わず後ずさりしてしまった。このみちゃんの秘密がまた一つ暴露されてしまった。ぞぞっと鳥肌が立ち、弛緩していたおまんこがキューっと音を立てて縮こまった。  マジックミラーというのだろうか。刑事ドラマの取調室によく出てくるヤツ。こっちからは窓になっていてよく見えるが、向こうからは鏡になっているヤツ。「奥さん、あの男に間違いないですね。向こうからはこちらが見えませんから安心してください」と刑事に促される、あの窓だ。  このみちゃんのベッドがすぐ2メートル先に見える。真正面にはシャガールの絵。床に散らばったシルクのショーツたちは手を伸ばせば掴めそうなほど鮮明だ。    ちょうど今、このみちゃんが「今日はこれにしよう」と言っていたショーツを下ろし、替わりに私が選んだのと色違いのものを脚に通しているところだった。色素の沈着した性器がピンク色のシルクをまとう。面積の狭いフロントからヘアがはみ出ている。その上にショートパンツを穿こうと腰を曲げた瞬間、紐が大陰唇に喰い込んでしまったのが見える。「うぐっ」という喘ぎが聞こえるほど壁が薄い。 「このみちゃん、そっちからはこっち、見えないでしょ?」  カーテンを左右に全開にして、大きく手を振ってみる。 「見えないから、サキちゃん安心して」  向かい合った彼女とは視線がずれている。明らかに向こうからは見えてない。しかしこちらからは、万事がよく見えるし、よく聞こえる。これじゃあ透明頭巾をかぶり同じ部屋にいるようなものだ。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加