「趣味の部屋」で見たこと

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 焦れた阿久津先輩から電話があったらしい。「今行く!」と言ってスマホをベッドの放り投げたこのみちゃんは、ショートパンツのジッパーを上げながら部屋から走り出て行った。  ほっと溜息をつく。  一歩下がりかけて、踵が何か大きくてずっしり重いものにぶつかった。振り向くと、真後ろに大型で真っ赤なビーズソファーが置かれていた。人の体型に合わせ形が変わり、座り心地がいいと評判のソファー。オルガズムの余韻で躰がだるく、脚がふらふらしていた私は迷うことなくそこに腰を沈めた。クッションの中の無数の細かいビーズが私のお尻の形に広がり、大らかに受け入れてくれる。  ショーツからはみ出たヌルヌルのワレメがソファーにくっつく。このみちゃんの唾液だけじゃない。私のワレメから湧きだした粘液が性器と鼠径部と太ももにねっちゃりとついていたのだった。  下半身ほとんど裸の状態で友達の部屋のソファに腰を下ろすのは悪いかと思ったが、良心に逆らわざるを得ないほど今の私は脱力感を感じているのだ。紐化したパンツがまた大陰唇に食い込んで来た。食い込みが反復され最も違和感を感じるのが肛門だ。お尻の穴の皮膚が剥けているかもしれない。でもそれを直す気力はもう残っていない。  心地よい眠気が麻薬のように忍び込んで来る。 「ジュンくん……」  目をつむり彼を呼ぶ。すると私の裸が彼に包まれたがっているのを感じる。ふやけた脳がジュンくんを慕っている。彼に抱かれたがっている。このみちゃんに舐められたところに彼を迎えたがっている。彼にオルガズムが与えられたがっている。    しかし、彼は遠ざかって行く。私は、待って、待って、と手を伸ばす。そしてなぜか腰をしゃくりあげる。ここにあなたが欲しい。──そんないやらしいことを念じている私。ショーツのフロントを引っ張り上げわざと深く食い込ませる。 「んんっ……」  このみちゃんに与えられた快感の残り火がジュッと弾け散った。深いため息とともに意識がだんだん混濁してゆく。眠気に耐えられなくなり私はズボズボと闇の沼に沈んでいくのだった。
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