このみちゃんが死んじゃう!

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 呼吸ができなかった。私もこのまま窒息して死んでしまいそうだった。頭が痺れて言葉が出ない。手足が震えて這うことも立つこともできない。悲鳴を上げたような気もしたし、しないような気もした。 「こ、こ、このみ……、目を開けて……」  阿久津先輩が立ち上がった。股間のモノが赤黒く膨張し今にも血を吹いて弾けそうだ。先端からダラダラと粘液が糸を引いている。精液が混ざっているのか、白く濁っている。どす黒く濁った顔はさっき以上に悪魔的だ。頬まで裂けた真っ赤な唇。熱病に浮かされた瞳で女の死体を見下ろしている。 「このみちゃん‥‥‥、ご、ごめんね、このみちゃん‥‥‥。私が‥‥‥、私の‥‥‥」  恐怖と失意のあまり私は失禁してしまった。生暖かい液体が太腿を濡らした。  その時だった。 「ああ……、先輩……、す、素敵よ……」  このみちゃんの声だ。よかった、死んでなかった! 動いたわ! このみちゃんが動いた。ああ、助かった。よかった、よかった!  私は自分の心と身体を統制しようと心臓を押さえ何度も深呼吸を繰り返した。気管支がヒューヒューと摩擦音を立てた。  唾を飲み込むとゴクンと頭蓋骨に響いた。あたかもその音が聞こえたかのように阿久津先輩は目を上げ鏡を覗き込んだ。と、私と目が合った。 「んっ‥‥‥」  両手で口を覆った。それでも、声が少し漏れてしまった。  勃起したものの鈴口から大量の粘液を垂らしている男と、初めて生の濡れ場を覗き見し太腿まで粘液でヌルヌルになり、おまけに失禁までしてしまった処女がマジックミラー越しに見つめ合っている。  え、ウソ⁈  私が見えている?   慌てて両手で躰を隠し背を丸めた。顔を背け、垂れた横髪でさえぎる。  ──そ、そんなはずはない‥‥‥。  目をつむり、大きく三回深呼吸をし心を落ち着かせる。  視線を上げていく。ゆっくり。恐る恐る。  男のモノはまだ、たくましく反り返り、先端が臍についている。白濁した液がダラダラと竿を伝っている。  さらに視線を上へ滑らせて行く。 「ひっ……」  また視線が合った。
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