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「あ、3枚しかないから、早い者勝ちってことで……。風邪ひいたり体調悪かったりしたら保健室にいらっしゃーい!」
うううう‥‥‥。女の私にも見えてしまうのだ。美しい彼女の顔からピンク色のハートがぱわーん、ぱわーんと四方に飛び散っているのが。
「ワンドリンク付きだからぁー。オレの男汁入りのドリンクさ! ガッツーンってタテちゃうぞぉ―!」
ぐぐぐぐ‥‥‥。また「オレ」になってるし‥‥‥。「立てちゃう」「建てちゃう」どっちだろう? え、まさか「勃てちゃう」ぅ?
「卒業するまで有効よ!‥‥‥あ、それじゃまずいか‥‥‥。ちょっと待てよ。えーと、えーとぉ‥‥‥うーん……」
フミカは口元に人差し指を添え、瞳をクルリと天井に転がす。この仕草だ! 大きく褐色に澄んだ瞳をくるりと回すこの仕草。──これがたまらなくかわいいのだと、全校の男子たちは口をそろえる。
「やっぱ卒業してからも有効にしちゃおうかなぁ‥‥‥」
ガオーーーーン!(男たちが一斉に天井を見上げ吠えたのだ!)
そ、そんなこと‥‥‥、瞳をくるりと回して考えるようなことかと、私はツッコミを入れたくなる。よっぽどバカなんだ、このオンナ!
ピンク色の、それもつい今しがた迄フミカの下半身に密着していた生暖かいクーポン券をめぐって、オトコたちの熾烈な争奪戦が展開されたのは言うまでもない。
ちなみに、負傷者3名。
バーカ!
男子たちの死闘を脇目に、フミカは腰を振り振り、悠々と教室を出て行った。
極めて軽症の3人。ホームルーム終了後、擦過傷やら捻挫を口実にすぐさま保健室に駆け込んだらしい。考えてみれば、彼らはサービス券なしで保健室に駆け込む権利を得たラッキーガイだ。教室に戻ってきた時、「ワンドリンク付きだったよなあ」と脳天から湯気が立ち上るほど自慢していた。
──ん? ワンドリンクって‥‥‥。
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