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愛光園、サッカー大会
「クリスマスイブと言えば、サッカーだよな!」
「だよなぁー!」
「愛光園クリスマス記念ハチャメチャサッカー大会で優勝して、ケンタッキー食うんだよな!」
「食うんだよなぁー!」
真純たちと軽くお茶してから帰宅すると、中庭に子供たちの歓声が溢れていた。玄関から中庭に回ってみると、たちまち汗まみれの子どもたちに囲まれたのだった。なんと20人を超えるヤンチャな園児たちの中にひときわ背の高い人物がいる。
「ゲ、ゲンジ先輩!」
「よーう、美浜さん!」
彼と肩を並べて息をハアハア言わせ、寄り添うように立っているのが朝子姉さん。
「サキ、お帰り! みんな、アンタのこと待ってたんだよ!」
雪が降り出しそうな寒空の下、みんな汗にまみれて荒い息をしている。すでにジャージが泥だらけになってる男子もいる。半袖半ズボンで膝をすりむいている女の子もいる。
「愛光園の子どもたちは男の子も女の子も、みんなサッカーするんだよなー!」
ゲンジ先輩がだみ声を張り上げると、幼稚園児から中学生まで全員が声を合わせる。
「するんだよなぁー!」
キャハハハハーと、少年少女の健康な笑顔がはじけ飛ぶ。
「美浜咲もオレたちとサッカーしないといけないんだよなー!」
「いけないんだよなぁー!」
ゲンジ先輩は愛光園が初めてだというのに、すっかりみんなの親分になっていた。朝子姉さんも幼稚園児や小中学生に混ざって、あんなに嬉しそうに輝いている。よかった。朝子姉さん、ゲンジ先輩と仲よくしているんだ。
途端にみんなに手を取られ、たっくんにお尻を押された私は、いつのまにか中庭の真ん中に引っ張り出されていた。こうなったら、やるしかないか! サッカーなんて中学生の時以来だ。走りまわるのって大好き。胸が高鳴り体中がむずむずしてきた。
「よーし、手加減しないぞー」
鞄をミニゴールの脇に立てかける。マフラーを取り、コートを脱ぐとみんながオーとはやし立てた。脱いだものをゴールの上に引っ掛ける。そして、セーラー服姿でにわか仕立てのミニサッカーコートを踏みしめる。下がスカートなのが心もとないけど、かまわない。だってみんな気心知れあった園の子どもたちだから。
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