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「ゲンジがボランティアでここに来たいって言うから、園長先生に訊いてみたのね。そしたらすぐ許可してくださって……」
ゲームの合間に朝子姉さんが息を弾ませて言った。久しぶりに見るお姉さんの笑顔。実は秋に就職が決まってから、お姉さんはちょっと精神的に不安定だったのだ。私の部屋に来てぼーっとしてたり、夜中に私の布団に入って来て赤ん坊のように胸を触ってきたりして。その彼女が今日は生き生きと輝いている。それもゲンジ先輩のお蔭だ。
見上げると3階の窓から園長先生が私たちを見下ろしてニコニコしていた。「美里先生ぇー」と手を振ると、私だけでなく園のみんなに「おーい!」と手を振ってくれた。
「ゲンジ先輩、園児たちのお父さんみたいね。すごく頼もしいし、カッコいいよ」
「へへへ……、そ、そうかなあ」
「そうだよ、ゼッタイ! 子供たちの気持ち、すごくわかってくれているもん」
「ふふふ、ありがとう……」
別にお姉さんのことを褒めたわけではない。それなのに、彼女は久しぶりの激しい運動で紅潮した頬をさらに紅潮させて、はずかしそうにうなずいた。それはまごうことなき恋する乙女の表情だった。
結果は1対0で「サンタクロースチーム」の勝利。その1点はなんとたっくんが決めたのだった。
「だって、ゆきちゃんのコチョコチョ攻撃がくつぐったくて、俺、動けなかったんだよ。そうだよな、ゆきちゃん⁈」
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