公開プロポーズ

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 その上にはカーネル・サンダー氏の笑顔が描かれた四角いボックスと、これまでに愛光園では見たことのないスヌーピーのマグカップが整然と並んでいる。食べ盛りの子どもたちを配慮してだろう。各列の真ん中にバケツサイズのカップがドデーンと置かれ、フライドチキンが山盛りになっている。コーラもジュースも今日はボトルのサイズが大きい。 「うわー、すっげぇー!」 「キャー、おいしそう!」 「こんな豪勢なの初めてよ、私!」  チキンバケツの周りから席が埋まって行く。特等席を奪われた子供たちは仕方なくその周りの椅子を引いて座る。だが、そこからは手を伸ばしてもチキンには手が届かない。彼らは一様に残念そうな表情だ。 「誰かお金持ちの人の援助ですかぁ?」  ませた女子中学生の声が上がる。  たしかに、こんなに贅沢なイブは私の知る限り初めてだ。篤志家からの支援があったに違いない。 「みんな、いつも明るく頑張っているからよ!」  料理担当の職員さんがみんなの前にお皿を置きながら、嬉しそうに語尾を上げる。  いつも渋顔の田口さんも、今日ばかりは嬉しそうだ。みんなのマグカップに飲み物を注いで回る担当だ。 「みんな、感謝していただこうな!」  その時田口さんと私の視線が合った。彼の意味ありげな視線で私にはピンと来るものがあった。え? ひょっとして──鍼灸師の「おじいさん先生」? ミツエさん? ほんと? そう言えば一週間くらい前、二人が園長先生の部屋で話し合っている場面に遭遇した。職員さんに頼まれてお茶葉の缶を園長先生のお部屋に届けに伺った時だった。確かクリスマスの話をしていたと思う。  言葉にしたわけじゃないのに、田口さんはコクコクとうなずいた。  愛光園で高校生は私と朝子姉さんだけ。今日はそこにゲストのゲンジ先輩が加わっている。考え方も行いももう大人の私たちはテーブルの一番隅の椅子を引く。私とお姉さんが隣り合って座り、ゲンジ先輩が向かいに座る。
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