公開プロポーズ

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 早くも油でギラギラになっている男のくちびるが不潔なものに感じられた。チキンやポテトを頬張りながら、感じていた彼の視線にもいやらしいものが含まれている。  ちょっとまずいな、と思った。ゲンジ先輩の今日の訪問目的は私にあるんじゃないだろうか。狙われている、と感じて、ミニスカートから伸びる脚をしっかり閉じた。今日こそ何かおぞましいことが起こるんじゃないかと、不安感に襲われた。  三年生の教室では先輩と朝子姉さんはカップル認定されているそうだ。私も部活のない定期テスト期間中に二人が学校から肩を並べて帰るところを何回か目撃している。バイトでもないのに夜遅く帰って来て、私が部屋をノックしても開けてくれなかったことがある。女としての私の勘では、その日お姉さんは処女を捨てた。その日を境に彼女はすっかり大人びてしまったのだった。私がセクシーショーツをあげると、とても喜んでいた。きっと先輩とデートする時に穿いているのだろう。  ゲンジ先輩が、校舎の三階からわざわざ私の教室に降りて来て、廊下に呼び出されたことがあった。夏休み明けだったと記憶している。特別な用があったわけでもない。ただ差し障りのない話をして、さりげなく週末に何をしているのかとか、バイトのあいている日を訊いてきのだった。朝子姉さんの妹分の私とも仲良くしておきたいんだろうな、ぐらいに思っていた。さり気なく半袖から露出した腕を触ってきた時は、ちょっと!と思ったけど。  バイトの終わる時間に外で待たれていたこともある。丁寧に断って、店のバックヤードに戻り、念のため朝子姉さんに迎えに来てもらったのだった。  普段、ゲンジ先輩はいい人なのかもしれない。だって、サッカー部員にも慕われているし、なんてったって朝子姉さんのカレシだし。でも、私にとっては要注意人物なのだ。ストーカーの傾向も持ち合わせているようだ。
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