公開プロポーズ

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 私の心は最終的に「恨み」に傾いたようだ。7月に「おじいさん先生」のお宅で会ったきり。今日はもうクリスマスイブ。5ヶ月間のご無沙汰を私は恨んでいる。その思いを声を落とすことによって込めたつもりだけど、女の子のことに鈍感そうなジュンくんにどれほど通じただろうか。 「私とは、はじめまして、かな……」  やはり制服姿の愛理さんがソファーから身を乗り出し、手を伸ばしてきた。 「ええ、初対面……ですよね? は、はじめまして……」  彼女の手を握ると、ぎゅっと握り返され、大きく上下に振り回された。 「あなたとなら仲良くできそう。ジュンくんのこと、よろしくね。ニャンニャーン!」 「え? ジュンくんのこと? あ、はい。ええ、よろしくお願いします」  愛理さんとは直接的な面識はない。ただ、ジュンくんと廊下で話しているのを一度だけ見たことがある。あの人がジュンくんのカノジョ人か。綺麗な人だな、と思っていた。そばで見ると一層美しい。すらっと背が高いし、肌が白くてきめこまやか。鼻筋がスーッと通り、高校生とは思えないほど大人びた雰囲気をまとわせている。その人に「ジュンくんをよろしく」と言われた。え? ジュンくんはあなたが独占したいんじゃないんですか?  それに、「ニャンニャーン」だなんて……。  みなさんの前でこなれすぎじゃありません?
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