公開プロポーズ

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 しかし、どうしてジュンくんと一緒に愛理さんがここにいるの? 同じ歳だから兄妹ではないはず。従姉妹? 遠い親戚? それとも許嫁(いいなずけ)? ──わかならい。 「じゃ、そろそろ潤さんと愛理さんの出番ですね」園長先生が若い二人を促す。「じゃ、サキさん、わるいけど……」  二人を集会室に案内してほしいというのだった。  部屋で一人になりたくて上がって来たのに、お客様をご案内してまた集会室に下りていくことになってしまった。まあ、いいか。一人ぼっちでジュンくんの姿やジュンくんと仲良くお話しする場面を想像することより、本物のジュンくんと一緒にいたほうがずっといいに決まっている。下に下りてまたゲンジ先輩と顔を合わすのは嫌だけど。お姉さんにも顔が合わせずらいけど、ジュンくんと一緒なら乗り越えられそうだ。彼が守ってくれるから。だって、私に「結婚しよう」って言ってくれた人だから。  ジュンくんと肩を並べて階段を下りる。一歩遅れて愛理さんがついてくる。 「本当に、もう腰の方は大丈夫なの?」  ジュンくんの暖かい視線を浴びせてくれる。思わずくちびるの端が上がってしまう。だって、本当に心配そうな顔するから。愛理さんが気になって後ろを振り向くと、おおらかな笑顔で私たちを見守っていた。それは私とジュンくんの仲を認めてくれる笑顔だった。 「うん、大丈夫……」  と言ったとたんに私は階段を踏み外し、パタン、という大きな音を出してしまった。彼の胸にしがみつく。そう、「男の性感帯だよ」と言われた胸に。 「ほらほら、キミは躰が華奢だから。僕につかまって」  ジュンくんの右手が私の右手を握ってくれる。左手は後ろに回され私の腰骨をしっかり支えてくれる。腰の括れからヒップに移行する、女の子にとっては本来異性にはあまり触られたくない部分だけど、なんか……とてもいい。大事なところがしっかり守られている安心感。
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