車中キス

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「『愛情はみんなの前で惜しみなく表現せよ』──それが、牧村家の家訓だよねえー、ジュンー?」  首を傾げ語尾を長く伸ばす愛理さんに彼は戸惑っている。視線があちこちさまよっている。本当にそんな家訓があるのだろうか。そういえばミツエさんもセックスに対してはおおらかだ。「賛美すべきもの」「褒め称えるもの」と言っていたではないか。 「今どきの女子高生を5カ月も放っておいて、普通の女の子なら逃げちゃうよ。サキが貞淑だから我慢してくれたんじゃない?」  「サキ」と呼びつけにされた。イヤじゃない。それどころか、嬉しい。自分も牧村家の一員になれたような気がする。愛理さんのこともこれからは「アイリ」と呼ぼう。 「5か月分、ここでまとめてキスしておきなよ。じゃないと家に入れてあげないから」 「言っとくけど、愛理の家じゃなくてオレの家なんだよなあ。オマエにそんなこと言われる筋合いはない」  愛理と論戦を戦わせながらも、ジュンくんは私への侵略にも抜け目がなかった。今や彼の片腕は私の肩に回され、指の先がさわっさわっと胸のふくらみに触れている。奥手そうでけっこうプレイボーイなのかも。 「ほら、ジュン、こうやってさあ……」  愛理は後ろに上半身を丸ごと乗り出し、ジュンくんのもう一方の手を取ると、私の露出した膝に置いた。 「あっ……」  彼の体温を感じてくちびるから声が漏れてしまった。慌てて口元に手を当てる。愛理に意味ありげなねっとりとした視線で見つめられ胸の奥がこそばゆい。  彼の手はしばらくそこに留まっていた。愛理がじーっと見ている。ジュンくんの体温と愛理の視線で、そこは沸騰するように熱くなってくる。肩に回した手の先が私の胸をさわさわと触って来る。そして膝に置かれた手が少しずつ太腿を上がってくる。 「‥‥‥っく」  ──どうしよう。お母さまが運転していらっしゃるのに、こんなことするのはいけないことだわ。  そう囁く理性を溶かすようにして躰の奥が熱くなってくる。ぴくぴくと反応してしまう。 「んん‥‥‥」  お腹の奥の方で何かが弾けようとしている。 「ほら、ジュン……。サキが感じて来てる。さあ、キスしてあげて」  愛理のささやきと同時に 「ふんん‥‥‥」  唇が塞がれた。乱暴な塞がれ方だった。
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