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突如としてシャッターが下り、快感の流入が遮断された。私は、ジュンくんを押しのけ、助手席に向け身を乗り出す。
じっと愛理の目をのぞき込む。
「愛理……だったの……?」
「あら、何のことかしら?」
とぼけているのは明白だ。私がのぞき込むとその目はわずかに揺らいだものの、そうよ、それがどうかしたの?と開き直っているではないか。今頃気づくなんてアンタってバカじゃない?とも言っている気がする。
「目隠しされ……、ほ、保健室で……、縛られて……、あの時の人って……」
「フフフ……、そっか、バレちゃったんだ」
悪びれる様子もなかった。というか、ばれることを待っていたような表情さえしている。
私の方も羞恥心も怒りも軽蔑もなかった。ただただあっけに取られ言葉を継げなかった。
フミカは私のサイズを図るためだと言っていた。私にぴったりのランジェリーをつくるのだと言っていた。女のカラダは女のカラダで測るのだと。
「あ、愛理さんってね、幼い頃から才能があったの。ほら……、何て言ったらいいのかしらねえ……」
二人の険悪な雰囲気を見るに見かねて、お母さまが割って入った。
「……触りさえすれば、同じものを再生する能力。アイリってね、粘土でロダンの彫刻のレプリカだってできちゃうんだから」
「ううん」愛理はアニメ声でかぶりを振った。「いやーだ、ナツホさーん、ロダンはねぇ、アイリにはムズカしいですぅー!」
決定的だった。このアニメ声。保健室で「かわいい!」って言われた時と同じ声だ。
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