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愛理が話を本線に戻す。
「そうなの。なぜか、ジュンの将来のお嫁さんは私が探す、みたいな変な責任を感じてたの。きっと昔の牧村の叔母さんたちの霊が憑いてるんじゃないかしら」
愛理は両肩を手で払う仕草をすると、ジュンくんのお母さんがフフフと笑った。かわいいと思った。
「だから、サキってどんな躰しているんだろうって、すっごく関心があったの。あ、誤解しないでね。私がサキの躰を同行したいということじゃなくて、あくまでもジュンのセックスの対象としての躰だからね。一度結び合ったら絶対離れられない躰にしてやろう。性感帯を思いっきり花開かせてやろう。そしてほかのどんな女より美しく飾ってあげようと思ったの。思いっきりエロいランジェリーを作って。でも、ちょっと調子に乗りすぎちゃったみたいね……。ごめんなさい」
三度目の謝罪だった。うつむいた彼女の顔は長い髪の毛に隠れて見えなかったけど、背筋はピンと伸び、しっかり揃えられた膝のうえに両手が行儀よく置かれていた。その姿勢が彼女なりの誠意だ。愛理ってとても素直な子なんだ。
私はちょっと無理して笑顔を張り付け、「いいよ、もう」と手を振った。そしてジュンくんに向けて今一番気になっていることを訊いた。
「私がジュンくんの初恋? 『やっと見つけた』って‥‥‥、私たち、桜坂で出会う前にどこかで会ってたっけ?」
記憶のどこを探ってみてもジュンくんと会った記憶はない。初恋だったと言われてすごく嬉しいけど、私は混乱していた。一体どこで会ったんだろう?
「あの時は、オレもサキも小6だった」ジュンくんが語り出した。「オレは名前を教えなかったけど、キミたちは女の子どうし呼び合っていたから、キミの名前は知っていた。──ミハマ・サキ」
ああ、あの時の‥‥‥。確かに小学校6年生だった。神社の夏祭りでの出来事。
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