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私は彼の腰に抱きついた。左右の大腿筋が逞しい。私は彼の屹立したものが喉の奥に突き刺さるように、男のお尻に抱きついて、抱きかかえて、爪が食い込むほど力いっぱい引き寄せる。だって、ジュンくんは私のものだから。独占したいから。
すでに鈴口から大量の粘液を噴き出していたそれは、ニュルリと喉の奥まで滑って来た。顎の骨がミシミシ音を立てた。関節がはずれたかもしれない。
「サキ! んぐっ! そんなことしたらオレ……」
ジュンくんの声が裏返っている。私の肩を押し、屹立を抜こうとしている。イヤ! 放さない! 心臓のように脈打つこれが好き! 手に渾身の力を入れ、彼の腰に抱きつく。強く強く抱く。爪が彼の臀部に食い込み血を滲ませる。
飲み込みたい! ジュンくんの、ジュンくんの灼熱の欲望を飲み込みたい。彼のお尻をさらに強く抱き、喉の奥に誘い込む。
苦しい……。酸素が入ってこない……。死ぬかも……。
「サキちゃん! ダメ!」
お母さまと愛理が叫んでいる。
「吐き出しなさい! ダメ! あなた、窒息死しちゃう!」
「サキ! 狂ってる! 正気に戻って!」
「ジュン! 絶対いま射精しちゃだめよ! 気管支に入ったら死んじゃうわ!」
イヤだ! 窒息してもいい! ジュンくんの、ジュンくんのモノは私のモノ! 絶対離さない! どうして私からジュンくんを引き離そうとするの⁈
最後の手段だ。私は歯を立てる。彼の逞しいものを噛み切ってやる! 永遠に私のモノにしてやる。
そう決意したとたん、後頭部に痺れが走った。ジュンくんがはじいたチェロの弦がブオーンと鳴っているよう。目の前から色が薄らいでいく。ああ、酸欠なんだ。痺れが躰に広がっていく。手が冷えてゆく。力が入らない。
口を満たしていたものがすごい勢いで引き抜かれた。前歯が抜かれるかと思った。ほぼ同時に、私の顔に何かが噴射された。すごく熱くてドロドロしたものが。遠くで、そう、宇宙の彼方ほどの遠くで、ジュンくんの絶叫が聞こえた。
ああ、私は空っぽ。落ちてゆく、落ちてゆく……。
私は……、空っぽの私はどうなっちゃうの……。
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