マラソン大会

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 そこへ、 「バーカ! オマエの処女膜はもうオレがいただいただろ?」  あとから走って来た同じクラスの佐藤君が広い手のひらで美丘の頭をがしっと掴む。 「ちょ、ちょっと、ヒロキ、みんなの前で‥‥‥」  美丘は紅潮した頬をさらに紅潮させて私と真純をおどおどと覗き見る。こんなにしおらしくなってしまった美丘は初めてだ。  佐藤君は美丘の手を取り、よいしょ、と引っ張り起こす。 「きゃっ!」  男の力の勢いで美丘が大げさに彼の胸になだれ込む。ちょっとわざとらしくもあったが。佐藤君は「ほら」と、埃か砂を払うふりして、美丘の胸の膨らみを指で掃く。しぶとい汚れと対峙するように摘まみ上げている。美丘はもっと、もっと、とねだるように胸を突き出している。脚をよじってもじもじさせている。その様子を私も真純も脇から眺めている。私にはわかる。この二人、躰の相性はかなりいい。 「よし、行くぞ!」  佐藤君が美丘の丸いお尻をポンポンと二度叩くと手をつないで歩き出した。  私たちに振り向いた彼女の顔はさっきまでの苦痛が嘘のようだ。私が知っている美丘の中で一番かわいい瞬間だった。 「いいなあ、美丘は」  真純が口元に人差し指を当て涎を垂らさんばかりだ。  真純だってクラスの渡辺君と仲がいいのに、まだ告白には至っていないのだろうか。そっか、渡辺君は野球部。恋愛禁止なんだっけ。でも、みんなの目に触れないどこかで密会することはできないのだろうか。
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