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「とにかく、私たちもゴール目指そうよ」
私はお尻の砂をはたき落としてすくっと立ち上がる。そして足を広げてだらしなく地べたに座り込んでいる真純に「ほら!」と手を差し伸べる。
走り出す。スピードは徒歩と変わらず。ただ肘だけは直角に曲げて。
やっと国道に出た。視界に再び真っ青な大空が広がる。脇をバスや自家用車が通り過ぎてゆく。車の騒音が妙に懐かしさと安心感を与えてくれる。
あの陸橋をこえ市民公園の入口に入ったら目の前が運動場で、トラックの直線距離を100メートル走ったらゴール。そこにはきっとジュンくんもいるはず。私がゴールインするのを今か今かと待っているはず。想像の中の彼の笑顔と逞しい姿に励まされた私は、ほとんど限界に達した真純の手を引き走っている。
うしろから、トコトコトコとどこかで聞いたようなかわいい足音が追って来る。ふと、後続者に目をやる。
「このみちゃん!」
足をぴたりと止めると、背中に真純の頭が突っ込んできた。
「このみちゃん、もっと前を走っているかと思ってた」
今でも結構余裕で走っている。大して息も切れてない。なのにどうしてこんな最後尾を?
「結構いい線付けてたんだけど、ちょっとヤバイことが起こっちゃっててさあ……」
「ヤバいこと?」
このみちゃんに起こるヤバイことと言えば、だいたい想像がつく。
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