マラソン大会

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「じゃ、船橋さんはオレに‥‥‥」  ふだんの真純ならゼッタイ好きでもない男子におぶわれるようなことはしない。気が強いから。だが、今日はよほど疲れているんだろう、「ごめんね」としおらしく手を合わせてから木坂君の背中に身を預けた。 「お、船橋さん、おっぱい大きいね」 「バカ! さっさと歩け!」  真純はおぶってもらっている立場もわきまえずに木坂君の頭をポカンと殴る。  そこへ遅れて馳せ参じたのが渡辺君だった。同じクラスで同じ野球部。木坂君には密かにライバル意識を燃やしている男子。 「じゃ、オレは宮田さんだ。あの日、ほら美浜さんと野球部の朝練見に来てくれた時、スッゲーエッチなパンツ見せてくれたから、そのお礼だよ。ハハハ‥‥‥。だから……」  オレにおぶさりなよ、とは言わなかったけど、腰を低め背中を向ける。  このみちゃんは小さな目をぱちくりさせもじもじしていたが、渡辺君に「オレでよければさあ、へへへ……」と気の弱そうな目で見つめられると、コクリとうなずいて、身を預けた。横から見ていると、彼の首に回された細い腕が震えている。 「エヘヘへ……」  このみちゃんが恥ずかしそうに笑っている。「スッゲー軽いんだね」と首を捻った渡辺君と顔がくっつきそうだ。 「オレ、宮田さんのこと、ゴールまで安全に届けるから。絶対に落とさねえから。だから、オレの背中でねむっててもいいよ」  渡辺君がそう言って顔を赤くすると、このみちゃんはつっぱっていた上半身を彼の背中にしんなりと寄り添わせる。ゆでたホウレンソウみたいだった。 「私のおっぱい、感じる?」  このみちゃんが男子にこんなこと訊くなんて信じられない。 「うん、すっごくいい。丸くてプニュってしてて……。うう……」  渡辺君が若干身を屈め、唸りだした。 「前の方、ちょっとヤバいことになってるけど……」  彼の視線を追うと、本当にヤバそうだった。ジャージズボンがあんなに膨らんでるし……。 「でも、頑張るから、宮田さんのため!」 「エヘヘへ……」  このみちゃんには、彼のヤバい状況は見えてない。でも、彼女は男子の生理現象は見ずとも理解しているようだった。
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