櫓立ちレース

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 みんなゴールインと同時にウレタントラックに倒れ込んだ。そして当然の帰結のごとく正常位で重なりあった。それを嫌がる女子はいなかった。真純でさえ、木坂君の躰に覆われて、憑き物の落ちた顔で大空に向けて喘ぎ声を上げている。 「ううーん! いいの! いいの! あ、そこ! 気持ちいいの!」  佐藤君は美丘の上で腰を振り始めた。彼の屹立がちょうどいいところに当たっているのだろう。 「ああーん、ヒロキ! ああ、ヒロキ! 突いて! もっと、もっと!」  美丘の甲高い声はふだんからよく通る。ましてや、今日は淫欲に艶を増し、八方に飛び散っているではないか。 「こら! オマエらいい加減にしろ!」  担任の大原が汚いものを見るように顔を歪ませて走って来た。そしてゴキブリでも踏み潰すように佐藤君の背中を踵でしごきだす。ゴリゴリっと背骨が悲鳴を上げている。 「ぐえー!」  うめき声を上げながら、なおも美丘の股間にストロークを送り続ける佐藤君。脇で見ていてその執念はすごいと思った。 「このやろー、オマエら退学にするぞぉー!」  やくざのように下品な叫びと同時に後頭部を踏みつけられた佐藤君は、地面に転がった。  憤怒にかられた担任の次なるターゲットは渡辺・このみペアだ。大原のずるいところは弱そうな男から仕留めてゆくところだ。彼は夢中になって愛し合っているペアにズカズカと近寄っていく。そして振り上げた足で渡辺君の背中を踏みつけようとした、その瞬間だった。 観衆の中から一人の男子が声をふりしぼった。 「いいじゃねえか! オレたち、抱き合いてえんだ! 性欲、もてあましてるんだ! いいじゃねえか!」  すると、あらかじめ示し合わせていたかのように、それに呼応する叫びがグラウンドを取り囲む観覧席から起きたのだった。 「いいじゃねえかぁ!」 「そうだよ! 好きな者どうし抱き合うことの何が悪いんだぁ! いいじゃねえかぁ!」
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