王子さま探し

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 このみちゃんは小さくてかわいいけど、男の子にモテるタイプではないと思う。自分からはおしゃべりの輪に入って来ようとはしない、どのクラスにでもいるちょっと暗めの目立たない子。でも、このみちゃんは脚がとてもきれい。ふくらはぎと太ももの脂肪の付き具合から、スカートに隠れたお尻がどんなにかわいいか想像することができる。彼女自身はそのことをよく知っているんじゃないかな? 席を立つたびに、短いスカートを下から引っ張って下着が見えないように配慮している。そんな姿を、クラスのけっこうたくさんの男子たちはチラチラとみている。私も時々チラ見してしまうことがある。  今日はそんなこのみちゃんがツレだ。本を読んでいたかっただろうに、私なんかにつきあってくれて感謝だ。  体操着の入れてあるバッグからザルを引っ張り出したとき、ツレがまた目をぱちくりさせた。  ──ハハハ。やっぱり「木の実」だ。  私はますますツレがかわいくなってきた。  何か言いたそうにピクピクさせているくちびるからはなかなか言葉が漏れて来ない。その小さな手を取ると一瞬身構えたが、にっこり微笑みかけてあげると力が抜けて肩がすうっと下がった。  ──ふふ‥‥‥。「木の実」を手なずけたぞ‥‥‥。  ふたり手をつないで教室を出た。  サッカー部は運動場を走り回っているから廊下の窓を開ければよく見える。市内の中学生一律の五分刈りの名残を残す部員たちは一年生だろう。一人一人の顔を観察するが目的の男子はいなかった。念のためパンプスに履き替え、運動場を囲むコンクリートの階段にまで下りてみる。このみちゃんと練習風景が一番よく見える地点に歩いて行く。  向こうのゴール前で練習しているのはどうやら上級生のようだ。  目の前では、オレンジ色の円盤型マーカーを等間隔に並べ、その間をドリブルしてゆく。一年生たちのようだ。みんなとても上手だ。どうしてあんな器用なことができるんだろうと不思議に思う。ボールが自分の躰の一部のよう。ふくらはぎと腿に筋肉がカクカクって出っ張っていてたくましい。男子ってすごいよね。私もこのみちゃんも思わず拍手してしまう。
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