7分の1エッチ

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 明日は入れてもらおう。どんなに痛くても入れてもらおう。指が入ったんだから、これも入るはず。恐れと期待と憧れ。私の心はいろいろな感情とそれらの絡み合いで複雑だ。でもそんなまだら模様を大きく(くっく)る入れ物があって、それは「幸せ」と呼んでもいいと思う。  私のために一生懸命男の欲望を我慢してくれているジュンくんは本当にいい人だ。本当に私のためを思ってくれる人なんだ。本当に私を愛してくれているんだ。でも、これ以上彼に我慢させるのは忍びない。ジュンくんに甘えすぎるのはいけない。私の方から勇気を出さないと。  そう、明日にはきっと‥‥‥。  挿入を保ったまま3分ぐらいじっとしていた。ジュンくんの指が私の深い所になじんでいく。侵入者に敵意をむき出しにしていた襞が留飲を下げ、反応を探るように彼の指にまとわりつきだした。愛液が指の表面をふやかし、溶かし、膣壁と融合してゆくような錯覚にとらわれる。 「少しずつ動かしていくよ」 「う、うん」小さく頷く。「ゆっくりね。ゆっくりだよ」  私は完全に赤ん坊だ。慈悲と憐みに頼らなくては今にも命が尽きてしまいそうな無力な存在。ジュンくんの優しさにやっと生きることが許されている小さな小さな存在。 「ふふふ」ジュンくんが鼻から息を吐いて笑った。「臆病だな、サキは」  小学生のころ、愛光園の前に小川が流れていた。今ではコンクリートに囲われ、ブロックで蓋がされていて見えないのだが。  流れが緩やかで、春になると桜の花びらが水面に散り、ゆっくり、ゆっくり……、本当にゆっくり流れていくのだった。花びらどうし寄り合ったかなと思ったら、また離れていく。ゆるゆると流されながら、くっついたり離れたりを幾度となく繰り返す花びらをまだ小学生だった私は飽きずに眺めていた。その場面が脳裏によみがえった。  私は流されていく。流れに身を委ねていれば、きっと海にまで行ける。広くて真っ青で光に満ち満ち溢れた溢れた海へと。喜びと希望に満たされた自由な世界へと。  ゆらゆら。ゆらゆらと……。離れたりくっついたりしながら……。  ジュンくんは指の先だけで根気よく膣の奥の方を拡張してくれる。決して無理はせず、ゆらゆらと漂うように。膣の奥が彼の指とくっついたり離れたりしながら、次第に、──それは本当にゆっくりではあるけど、───次第に馴染んでゆくのだった。    さっきまで難関として立ちはだかっていた狭隘な中間部は指一本だけ許したきり、まだキツキツだ。
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