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「そうだな‥‥‥。ということは、オレも半分童貞じゃないってこと?」
「ジュンくんは、入れてないじゃない。だから、まだ……、童貞……」
ま、またしても、露骨な表現を使ってしまった。「入れてない」だなんて。「童貞」だなんて……。頬が火照ってしょうがない。チラッと彼を見てすぐにうつむく。ごくっと唾をのむ。鼻血が出そうなほどのぼせている。
「でも、サキの手でオレ‥‥‥」
「イっちゃった‥‥‥もん、ね?」
「だから、オレも童貞、半分だけ卒業」
「もう……」
私はジュンくんの腕をつねった。そして額を彼の胸にこつんと当てた。「入れてない」の次は「イっちゃった」だなんて。私たちの会話は露骨さを極めていく。二人の距離が縮まるほど会話も行為も露骨だ。今晩、完全に処女と童貞を捨てちゃったら、私たちの会話はどんな卑猥になることだろう。想像しただけで‥‥‥、うふん、湿ってきてしまう。
「去年はこれで栞を作ったのよ。今でも愛光園の本に挟まっているよ」
話題を逸らした方がいいかな、と思っての一言だったが、
「で、今年は? 集めた花びらで何するんだっけ?」
「え‥‥‥、それ、言わせる? 私に?」
元に戻され、私はつまった。
顔が熱くなる。ジュンくんを見上げると、彼も耳の下を掻きながら、視線を浮かせた。
「ジュンくんの希望なんだからね」
「そ、そうだったよな‥‥‥」
何をすっとぼけてるんだろう。彼って時々そういう所がある。自分から言い出したくせに。
「桜の花びらでだなんて乙女チックだよね、ジュンくんって‥‥‥」
予想外の形容詞を張り付けられて、彼、戸惑っている。フフフ、かわいい。
「お、男はなあ‥‥‥ロマンを追求するんだよ。徹底的に‥‥‥」
「追求しすぎて、少女漫画になってるし……」
その時暖かな風が吹いて、一斉に花びらが舞いだした。桜坂がもわーっと淡いピンクに染まる。
「おお、来た来た。ほら、サキ、もっともっと集めようぜ!」
同時に走り出そうとして、真正面からぶつかった。そう。なぜか真正面から衝突したのだ。
二つのザルから花びらが数枚ひらひらと散り落ちた。
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