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「こ、この‥‥‥、このみちゃん…‥‥」
目を疑った。同時に身体が凍りついた。
無口で控えめなこのみちゃんが。教科書と純文学しか知らないこのみちゃんが……、デリケートゾーンのかろうじて隠れる横紐スキャンティ? 半透明の白のシルクが女の複雑な地形に食い込み、形と色を浮き立てている。さっき野球部員の目の前にこれがさらされたってわけ? この紐が? この地形が? 透けて黒々しているのが? それでオトコたちが狂乱したってわけ?
女の子って、スカートの中が怖い!
「ねえ、サキちゃんも極秘サークルに入らない?」
このみちゃんがうつむき加減に上体をかしげて、ほーっとため息をついた。 目の前では生徒たちが続々と正門に入って来る。その流れを合流する手前で私たちは足を止めていた。
「極秘……なの?」
「うん、ほかの女の子には内緒。男子にも絶対に知られたくないサークル」
「な、何それ?」
「セクシー……下着……愛・好・会」
さっきまでおどおどしていた視線が力を得、私の瞳を射抜く。ウルトラマンのレーザー光線のように。
「下着? セ、セクシーなヤツ?」
「そう。会員、もっと増やしたくて……。サキちゃんが入ってくれたらほかの女子もたくさん入ってくれるかなって……」
のけ反りそうになった。文学少女の彼女がセクシー? いつも窓辺で一人本を読んでいるか、ぼーっと空と校庭を眺めている彼女がシ・タ・ギ? でも、理解できる気がする。羞恥心が強くて内向的な彼女だからこそ、その日の気分に合った美しい下着をつけて自らを解放する。──多くの女性がやっていることじゃないか。純文学だけの青春なんて息が詰まってしまうし。
「会員って今何人くらい?」
このみちゃんは初夏の澄んだ青空に向け細い指を一本立てた。
指につられて上空を見上げると一片の雲が浮いている。それがショーツの形に見えたのは、すでにエッチモードに切り替わっていた証拠かも。
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