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「1人なの。今のところは」
「と言うことは……」
「そう、私、ひとりだけ」
私は、こくりと頷いた。ちょっと考えるふりをした。でも、その時もう答えは決まっていたと思う。だって、ウルトラマンのレーザービームだし、断りでもしようものなら、ねちねちと陰湿に報復されそうな気がしたから。
セクシー下着が別にいやらしいわけじゃない。それを愉しむ大人はたくさんいるし、彼女らがみんな淫乱な性格をしているわけでもない。ごくごく普通の女性がそれを愉しんでいるのだ。どうせスカートに隠れて周りの人には見えない部分じゃないか。一番怖いのは断ってこのみちゃんを傷つけてしまうこと。なら……、
「いいよ!」
パーンと花火が上がった。今校庭に降り注いでいる朝日よりも明るくて清々しい笑顔だ。窓辺のこのみちゃんがなんて明るい笑顔をするんだろう。赤ちゃんのように無垢な笑顔。
「でも、ほら、私、養護施設だし、お小遣いあまりないから下着たくさん買ったりはできないと思うけど……」
「ううん、それは必要ないの。お金は全然かからないよ。スポンサーがいるから」
このみちゃんの抑揚のある早口、初めて聞く。軽快な音楽のよう。
「スポンサー?」
声が裏返った。バックに怪しげな人がいるんじゃないだろうか。「サ」の形をくちびるに残したまま固まった。
「そう。私たちはそれを身につけて愉しんだらいいの。たまには見せ合いっこしたりね……」
目をパチパチ高速まばたきさせるこのみちゃん。
「見せ合いっこ?」
ということは、スカートをまくってショーツの見せ合いっこ?
始業のチャイムが鳴る。様々な疑問が渦を巻いているのに「行こう」と手を取られた。ふたりは手をつないで昇降口に走って行く。何か、とんでもない青春ドラマが始まる予感がした。
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