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私は顔を上げ、お姉さんを見た。うつむいた顔は青白く寂しそうだった。蛍光灯の加減だろうか。私の大好きな朝子姉さんが、今日また一つのことをあきらめたのか。
「朝子姉さん……、ごめんなさい。私……」
「な、何いってるのよ、サキ! ちょっといいなって思ってただけだよ! つきあいたいなんて思ったことなんてないんだから。ゲンジがサキのこと気に入ってるならそれでいいの……。ほら、また泣く……」
涙が溢れて止まらない。多くのことを諦めて来たお姉さんが、私なんかのためにもう一つ諦めようとしている。ことあるごとに、恋愛なんかしないなんて大見得切ってるけど、お姉さんだって女の子だもん。カッコいい王子様の夢を見ることだってあるはず。それを同じ施設の子のために断念するなんて。
ダメ! そんなことゼッタイあってはならないこと。諦めないで、お姉さん。私、お姉さんの味方だから!
モテすぎるのはよくない。周りの人を傷つけてしまう。早くザル王子を探し出し、身を固めなくては。よし、明日も早起きして運動部まわりをしよう。
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