ふたたび王子さま探し

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「おい、見ろよ。コイツらオレたちの気を引こうとしてザルかぶってやがる」  二人のバレー部員がニヤニヤいやらしい笑みを浮かべ私たちに近寄って来た。一人にザルを奪われそうになったが、私は「むっ」と頭を押さえ必死にそれを守った。 「お! 見ろよこの子。11HR(ホーム)のあの子じゃね?」 「ああ、美浜咲! なんだよ、キミたちもバレー部に興味あるの?」 「大歓迎なんだけど、オレたち」  ザルをいじっていた手が降りて来て、私とこのみちゃんの鼻を指でつついたり、耳たぶをつまんだり、頬を撫でまわしたりしてくる。気持ち悪い。 「私たちの目的なあなたたちじゃなくて、このザル!」私は自分とこのみちゃんの頭に手を乗せる。「これを貸してくれた男子に興味あるの!」  目に力を入れ、顎を突き出し、毅然として言い放った。 「おいおい、美浜咲さんってこんなに気が強かったんだね。知らなかったよ。でも俺たち、気の強い女の子……大好きだよなあ」 「おう! 大好きだよなあ……」  二人の男子がニヤニヤしながらうなずきあう。一人の手が伸びてきて、私の肩に置かれる。ねっとりとした体温を感じ、「いや」と躰をひねる。 「バレー部にはいねーよ。女の子にザルを貸すような女々しいヤツ……」  そこへ、 「女々しくて悪かったなあ!」  懐かしい声が耳朶に響く。ああ、どんなにこの声が聞きたかったことか。見上げると、彼らの後ろに──いた! ザルの王子。桜坂の王子。私が会いたかった人。あたかもあの時からずっと私のそばにいたとでも言うように、どこまでも自然に、泰然とそこに佇んでいるのだった。  二人の不良部員はすごすごと退散した。
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