ふたたび王子さま探し

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「ちょっと、キミたち、どいてくれない」  一年生女子たちの群れをかき分けかき分け、彼は廊下をグングン進む。トコトコと子供のような足音がついてくるのは、このみちゃんだ。  保健室に運ばれていく途中、さっき体育館前にいた女子とすれ違った。他のクラスの一年生だった。スカートが長くて、昭和のスケバンみたいだ。お姫様抱っこで片乳がすっぽりの彼の手のひらに収まっている私を睨んで通り過ぎる。 「フミカ! このコ、ぎっくり腰!」  保健室。王子の一声にデスクで書き物をしていた養護教諭が立ち上がった。 「ハハ! 高校生がぎっくり腰だぁ?」  蓮っ葉で尖った声の方を見ると、──若い! キレイ! 素敵!  二十五、六ぐらいか。 背がすらっと高く、豊かでツヤツヤの髪の毛が腰のあたりまである。こんな綺麗な先生が学校にいたとは知らなかった。王子は彼女をフミカと呼んだ……。一体どういう……。  シャッとカーテンのあく音。 「ここに寝かして」  王子さまのうしろからこのみちゃんが出てきて、毛布をまくり上げてくれる。まるで侍女が王女のベッドメイキングをするかのように。  ベッドにゆっくり下ろされる時、乳房を掴んでいた彼の手にググっと力が入り、私のくちびるからは「んふぅっ」と、また変な吐息が漏れる。  もう手を放してくれてもいいのに、私に腕枕をしたまま覆いかぶさって来だ。たくましい胸に乳房が潰される。わざとそうされているのがわかった。私と彼とがこんなにも近い。ほのかな汗の匂い。私からは変なにおいがしてないかと気になる。  ほかの男子なら気持ち悪くて鳥肌が立つ場面だ。だが……、うっとりしてとてもいい気分だ。もっと近づいてほしい。胸と胸を合わせてほしい。汗の臭いをもっと嗅ぎたい‥‥‥。 「何よ。前がはだけてるじゃん。朝っぱらそういうことをしてきたの?」  養護教諭らしからぬ感情的な甲高い声。 「おう。アクロバット体位でやってたら彼女、腰ぬかした」  フミカは腰に片手を当て「ふー」と息を吐く。
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