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「また、そういう出鱈目を並べる。女の子の前で……。で、本当にジュンのカノジョなの?」
「うん、大切なカノジョ。よく見てやってほしいんだけど」
大切なカノジョ?……。再会を果たしてまだ10分も経ってないのに?……。悪い気はしない。でも、ちょ、ちょっと、アクロバット体位って?
「ふーん、かわいい子じゃん」
フミカ……、いや、養護の先生は私の顎を摘まみ右に左に動かし、顔をじろじろ観察している。その目にはねっとり潤んだ光があった。
「わかったわ。私が預かっとく。ちょうど退屈してたの。いいオモチャができてうれしいわ」
フミカが意味ありげな笑みを浮かべている。綺麗な顔ほど憎々しげに見える。
「ジュンとこのみ、ごくろうさま。早く教室に戻りなさい。授業始まるわよ」
養護教諭は彼とこのみちゃんに出て行くように促した。すると彼がスラックスのポケットから財布を取り出し、一枚の名刺をつまみ出した。
「腰が悪いんなら、ここ、お勧めだから」
彼はいたずらっぽい笑顔を浮かべ、露出しているブラのカップにそれを挟み込んだ。名刺の角が乳首に触れ、躰がピクッとふるえた。
「あ、それから」
彼がかぶっていたザルの内、赤いほうを私にかぶせ、青い方はもう一度自分にかぶせなおした。
「俺たちのペアルックね」
ニコリと爽やかな笑顔を広げたと思ったら、「じゃ!」と後ろ向きに片手を上げ、保健室から出て行った。お礼を言う間もなかった。
ジュンくん……。そうか、ジュンくんって言うんだ……。私の理想的な名前。やっと出会えた。私の王子さま。
しかし、このフミカって何者? 本当に養護教諭? 教諭ならなんで彼を下の名前で呼ぶの? このみちゃんの名前も知ってた。あの潤んだ視線は一体……?
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