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「え……?」
開け放たれた保健室の入り口の前で。ふーっと大きく息を吐く音さえ聞こえる。
ゴクリと唾をのむ。緊張で「ぐぐ」っと変な声が漏れる。
ウソ……。入って来た。
ドアを閉める音。運動場からの聞こえていた歓声が遮断される。デスク前のチェアーに上着をかけるかすかな音。
足音がこちらにゆっくり近づいてくる。床を擦るような焦らすような足音は、ベッドの上に何があるかをすでに承知している足音だった。
ベッドのすぐ脇で止まる。心臓が凍り付く。ごくりと唾をのむ。
──静寂。
極度の緊張が固体化して喉に詰まっている感じ。
視線を感じる。目隠しされているのに、舌なめずりしているオオカミの視線はありありと感じる。それは私の胸をねろねろ舐めるように徘徊している。
「だ、だれ?」
ゴクリと唾をのむ音が自分のものなのか相手のものなのか区別ができない。
「……」
返事がない。だが、なんとなく重々しい呼吸音から、それが男ではないかと想像がつく。緊張で乳首が縮みあがる。脚をしっかり閉じたいのに、縛られていてどうしても股間に空間ができる。
視線がやがて下へ下へと降りてゆく。何で見えもしない視線をこんなにありありと感じるのだろう。目隠しされると、人間の感覚というものは研ぎ澄まされてくるもののようだ。
スッ、スッ、スッと床を擦るような足音が三回。足の方へと降りてゆく。
さっきより明らかに荒くなった呼吸が足元から聞こえる。股間をのぞき込まれているに違いない。
何度も足を通され生地がよれよれになっている布は亀裂に食い込みやすい。現にピッタリ食い込んでいるのを感じている。羞恥心で脚をよじると食い込みがさらに度を増す。ワレメの形が浮き上がっているかも。毛がはみ出ているかも……。顔が羞恥心で熱くなる。
「だ、だれ……?」
もう一度訊いてみるが、答えの代わりに返ってきたものはどっと重みさえも感じる鼻息だった。怪物のため息のような空気の塊が太腿を撫で、股間をなぶり、お臍を通過し、ブラで覆われた胸をかすめる。
「うう……」
羞恥心から声が漏れる。間違いない。男子だ。ざわーっと鳥肌に覆われる。
屈辱に泣き声が漏れそうだ。どうしよう……。
「見ないで……。お願い。出て行って……」
体をよじって横寝になった。これで侵入者の視線を少しは阻めるだろうか。今できる唯一の防御がこれだ。ところが……、
「ひっ!」
うかつだった。浮き上がった背中でブラのホックが外されたのだ。とても慣れた手つきで。ブラを剥がすのに慣れている手。その手で私は犯されるのだろうか。
さわっと肩がなでられた。そこにはすでにブラの肩ひもはなかった。
肩甲骨に手をかけられ仰向けにされる。と、ブラが奪われた。
「ひいっ!」
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