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「はい、ありがとうございます」
本当にありがたくて、目頭が熱くなる。手が震えて来たから湯呑茶碗をテーブルに置く。
「今どきの高校生、とても素敵な下着、身に着けてるのね」
ミツエさんがすっと話題を変えた。その気遣いが嬉しい。
「あ……、はい……」
そうか、ミツエさんには下着がしっかりとみられている。
昨日保健室でズタズタに切り裂かれたパンツの代わりに、フミカが、こういうのちょっと試してみたら、と言ってくれたものだった。面積の狭い紐ショーツ。布地からヘアがうっすら透けて見えるちょっとエッチなやつ。色違いで3枚。放課後にトイレでスカートをめくりあげ、このみちゃんと見せ合いっこしたのだった。
昨日保健室でフミカはこう言った。
「このみにはカワイイ系。サキにはもっと大胆なヤツ。男のアレをピーンと勃たせちゃう過激系を考えてるの。だってアンタのおっぱい、手のひらサイズのくせに、こんもり高く盛り上がってるでしょ。揉んでみたら繊維がぎっしり詰まっているって感じだった。乳首だって小さいくせにツンと上向いてるし。今はまだ小ぶりだけど、開発したら素晴らしいバストになるわ。それにビーナスの丘もこんもりとしてる。それって男が夢中になる体型なのよね。私たちがランジェリーでばっちりサポートしてあげるから」
傲慢で冷淡に見えたフミカは私の味方だと知った瞬間だった。しかし、「私たち」とは、いったい誰と誰のことなのだろう。
「でも、アンタ、血行が悪いわ。生理不順もあるでしょ。それ、マグロの可能性大よ」
「マグロ、ですか? お刺身の……?」
その時の彼女のバカにしたような目つきが今でも脳裏に焼き付いている。
「不感症ってことよ。アンタ、そんなことも知らないの? 男にいくら愛撫されても布団にだらっと横になっているだけの女ってこと。一晩で捨てられる女。結婚して何度も浮気される女……」
男子にはモテると自負していた。高く積み上げた自信感がガラガラ音を立てみごとに崩れ去った瞬間だった。
そうか。機転が利いてかわいいというだけで男子は寄ってくる。でも、特定の男子とつきあうよになり肉体関係を持ったら、私は捨てられるのか。結婚しても幸せな家庭は築けない。
マグロを改善したいと思った。処女でモテても何の役にも立たない。結婚して幸せになることが最終ゴールなのだから。
昨日のフミカの話は私にとってなかなか考えさせられる話だったのだ。
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