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「そうよ。褒め称えるの。セックスを。さあ、サキさんも言ってごらんなさい、『セックス』って」
ミツエさんは私の手を握って覗き込んだ。至近距離で見るとミツエさんの眉毛は眉頭から眉尻まですっきりと伸びている。ミツエさんの歳になればいろいろなところが緩んで来るはずなのに、「線」が健在だった。角ばった顔ではない。どちらかというと丸顔だ。それでも目や鼻などのパーツの輪郭は細い「線」でできていてキビキビと動くのだった。今でも上品で素敵な人だけど、若い頃はかなりモテたに違いない。
「『セッ』……。だ、だめです。恥ずかしくて」
うつむいて躰をもじもじさせてしまう。ミツエさんが私の手をしっかり握っているのが視界に入って来る。
「『セックス』って言うのよ。さあ、もう一度よ。勇気を出して」
私は大きく三回ほど深呼吸をした。その間ミツエさんは私の背中を優しく擦ってくれていた。
「セ、セッ……クス」
「よく頑張ったわ!」
唾液が乾いた喉に引っかかり私はむせてしまった。ミツエさんは、頑張ったのね、本当に頑張ったわ、と声を裏返しながら私の背中をさすってくれた。「セックス」と言うことがどうしてこんなに褒められるのかわからない。でもスッキリした細い線で構成された彼女の顔を見ていると、それは正しいことに思えてきた。
「じゃあ、ここは?」
「は?」
ミツエさんの手が私の下腹部に置かれ、やっとリラックスした躰がまた緊張する。
「ここはセックスに必要なところよ」
ミツエさんの手がむき出しの太腿に掛かり、それが少しずつ脚の根元に向かって這っててゆく。そして──股間がすっぽり包まれた。
「ここはなんて言うのかしら? さあ、言ってごらんなさい」
「あ……」
触られた所がモジモジしてきて脚を閉じようとするが、ミツエさんの手が置かれていて閉じられない。
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