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一番怒りのオーラが強そうなキツネ目の頭目が切り出す。
「はっきり答えてちょうだい。アンタ、彼とつきあってるの?」
「は?」
予想もしない所から飛んできたボールがポカンと後頭部に当たった感じとでも言おうか。つきあってるって? 彼とはあの日以来会ってないし。今日が金曜日だからすでに一週間たっている。
「16ホームだったんですね、牧村くんって」
「『牧村くん』なんて呼ばないで『ジュンくん』って呼びな。『牧村健司』っつうエロオタクもいるんだよ、うちのクラスには。わかったか?」
「は、はい……」
彼は直接名前もクラスも教えてくれなかったけど、下の名前は保健室の養護教諭フミカから聞き、苗字とクラスはたった今、目の前の女子から聞いた。これで少しは彼に近づきやすくなっただろうか。
11ホームから15ホームまで校舎の一階。16ホームは二階。それも廊下の一番向こう。男子トイレの前。非常口に用のない限り女子には行きにくいところだ。これで学校で会えない理由がわかった。
「先週、アンタ、体育館からジュンくんに抱かれて保健室に駆け込んだろ? セーラー服の前がはだけたみっともねえ格好でよう。それも、おっぱいまさぐられながらなあ。この子が見てるんだヨ!」
キツネ目は一人を指差して言った。確かにあの時私たちとすれ違った女子だ。背は高いが顔がいじけている。こういう女は嫉妬深い。そして十中八九、頭は悪い。それも、すこぶる悪い。
「アタシ見たんだ。保健室から教室に戻る時もジュンくんに抱っこされてさあ」推測した通り本当に頭の悪そうなしゃべり方をする女だ。「こうやって片方のオッパイ掴まれてさあ……。す、スカートの下から、つっぱったパンツ見えてたし……」
つっぱってなんかいない。ごくごく普通の安物のショーツだ。こういう頭の悪い女には「つっぱったパンツ」に見えるのだろうか。気に入らない女子が身に着けているものはみんな「つっぱって」見えるのだろう。
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