スケバンに囲まれる

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「それに美浜咲、あなた愛光園の子だって言うじゃない。ジュンくんはちゃんとした家庭の子なんだ。お金持ちの子だし。あなたとは釣り合わないから。身分不相応ってやつ? その辺のことよく考えろっつうの」  キツネ目が「ちょうだい」と言って手のひらを出すと、右のオンナがそこにハサミを乗せた。文具ではない。小指掛けの付いた刃渡り20センチくらいはあろうかと思われるカッティングシザーだ。ギラリとした銀色の光沢に目を射られる。 「今度出しゃばったりしたら、こうしてやるから」   女はハサミの輪に指を入れ、両刃を開いた。そして摘ままれている私の乳首にそれを当てた。 「ひゃっ!」  セーラー服とブラの上からでも余裕で乳首を切り落とすことができるだろう。恐怖で脚が震え、全身が強張った。 「わかったな⁉」 「う……」 「わかったのかって訊いてるんだよ……。答えろヨ!」  シザーが強く押しつけられる。二枚の刃が徐々に狭まってゆく。あと3センチ締められたら、シャキン!と、乳首は切り落とされるだろう。この人たちは本当にやる。女の子の命ともいえる乳首のことなどなんとも思ってない。冷や汗が額を覆う。恐いよ。助けて。誰か助けて……。ジュンくん……。  その時、ナイフのよう甲高い声が空気を切り裂いた。 「みんな、サキちゃんを助けて!」  このみちゃんの叫び声だ。助けて……、このみちゃん、助けて!  クラスの男子が一斉に教室から飛び出してきた。ガタガタ、ドタバタ、ズタズタといった雑音が廊下に響き渡る。 「おまえら、美浜さんに何してるんだ⁈」 「美浜さん、大丈夫か⁈」  サッカー部の中川君、それに野球部の木坂君と渡辺君が先頭。そのあとからこのみちゃん。それに続いてクラスのみんなの大津波が押し寄せてくる。 「サキを放しなさいよ!」真純の声だ。 「サキを傷つけたら許さないから!」美丘も叫んでいる。  ほかの女子たちの甲高い声も廊下にガンガン反響している。
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