母のまなざし、そして運命の人。

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 おしゃべりは思ったより弾んだ。  私はクラスの友達のことや、バイト先の仕事のことや、思いやりはあるけど、虎視眈々と私を狙っている店長のことなどを話した。彼は、英語の先生のへたくそな英語をまねしたり、古典の先生の眉毛を掻く癖をまねたりして私を笑わせてくれた。中学の時まで習っていた空手の話もしてくれた。立ち上がって型も見せてくれた。これは太極初段、これは平安二段と。こっちが軸足で、こっちはこうやって捻るんだ、と素人の私にもわかるように説明し、披露してくれるのだった。  嬉しい。無口で不愛想な彼が私にこんなに心を開いてくれて。こんなに私に興味を持ってくれて。こんなに笑わせてくれて。笑えば笑うほど彼のことが好きになって行く。頼もしさを見せつけられるほど惚れてしまう。  あら、私ったら……。いつの間にか彼の半袖を掴んでいる。あら、いつの間にか彼の手を握っている。あら、無意識にこんなに躰を寄せている。なんて貞操感の乏しい私なの? 「そうか、うちのクラスのバレー部3人がか……」 「すっごく怖かったんだから、もう……」  16ホームのおっかない女子に囲まれた話をすると彼は眉間にしわを寄せた。「アイツらぁー」と腕組みをし天井を睨みつけている。 「どこか(つか)まれたりとか(つね)られたりとかしなかった?」 「したした。もう、ほんとうに痛くて……」  あの時の恐怖が蘇って来て、(つね)られた方の胸に手を当てる。くちびるがわなわなと震えた。 「そうか、そっちか?」 「え?」 「やられたんだろ、チ・ク・ビ?」  恥ずかしい部分の名称を言われ、どぎまぎしてしまう。 「あ、いえ……、も、もう大丈夫だし」  胸から手を下ろす。背中を丸めて膝の上で両手をもじもじさせてしまう。  男子の前で胸をいじってしまったことが恥ずかしい。彼の目が見れない。  すると、 「どれどれ……」  さっきまで空手の型を披露していた筋肉質の手が伸びて来た。 「ここか?」 「え‥‥‥」  視線を落とすと、私のかわいそうな乳房が彼の手に覆われていた。とても優しく、ふんわりと包み込まれている。彼の愛情といたわりが伝わって来てうっとりとしてしまう。心がとても穏やかになる。 しかし……、  え? ど、どこ触ってんの? それ、女の子のおっぱいなんだけど……。あのぉー、ふつう、そういうところは触っちゃいけないと思うんですけど……。あ、実はわたくし、男の子に触られるのって初めてでして‥‥‥。あ、イヤ……、そんなにモミモミされると……。 「ん、はぁ……」  吐息に声が混ざってしまった。慌てて口元に手をやる。 「かわいそうなことをした。ごめん……」  気持ちいい。やっぱり鍼灸術の効果だ。以前は痛みしか感じなかった乳房が、こんなに彼の手の動きと体温に酔っている。  指が食い込んできた。もはや、触られている、包まれている、覆われているといったレベルでは済まない。揉まれているのだ。つかまれているのだ。こねられているのだ。お餅みたいに‥‥‥。 「あっ……、ふっ……」  え? うそ? 乳首が立っている……。すごく敏感になって、乳肉がゆがむたびにブラに擦れて、刺激がビンビン伝わってくる。そればかりではない。下腹部で何かが膨らんで炭酸飲料水のように泡立ってくる。なんだろう。これ、なんだろう。とても……、気持ちいい……。
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