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「美浜さん‥‥‥」
レーダー照射から逃げるすべを知らない彼は私の腰におずおず手を回し、思いっきり引きつける。とたんにバランスを崩し、私は彼の胸に倒れ込む。ドミノ式に彼も倒れる。気づくとふたりはカウチ上で横寝になって向かい合っていた。
「え? あ……」
上手く状況が把握できずにいると彼に肩を押された。その結果、私は彼の腕枕で仰向けになり、脚と脚が絡み合う格好になっている。ベランダから差し込む日光が私たちの上半身を照らしている。
イヤだ……、これって……、アレをする時の姿勢だし……。そう、『セックス』。恥ずかしがってはいけないとミツエさんが言っていた、セ・ッ・ク・ス……。
まっすぐ上から見下ろされる。顔と顔の距離は30センチもない。まなざしの熱さに焼きつけられる。彼のレーザーは私の瞳を通し、心の奥深いところまで照らす。そしてそこに眠っていた何かを目覚めさせた。──何だろう。私の心に眠っていてたった今目覚めたこれは何だろう。遠い日の記憶? それとも意識化されていなかったトラウマ?
まなざしを注がれること。──私はそれにどれほど憧れてきたことか。生まれた時、母は私にまなざしを注いでくれただろうか。当然、記憶にはない。
誕生の瞬間から捨てられる運命だったのだろうか。母に疎まれながらこの世に生まれてきてしまったのだろうか。そうだとしたら、私の中にはまなざしの経験がないことになる。養護施設でも見つめられるなんてことはない。職員さんたちは仕事で施設に出入りしているのだ。それにみんなに気を配っていなければならないのだから、私だけ愛のまなざしを独占できる立場ではないのだ。
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