母のまなざし、そして運命の人。

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 養護施設には特定のはない。でもなら幼い頃からあったような気がする。私をいい方へ、いい方へと導いてくれる神さまを漠然と信じてきたような気がする。  人生、必ずよい方へ向かうという、根拠のない自信があったような気がする。  高校一年生で婚約。  ──いいじゃないか!  高級ホテルの最上階のレストランでプロポーズされ「Yes」か「No」か選択を迫られるわけではない。「仲良くしようよ」「うん、いいよ」。そんなノリでいい。眉間にしわを寄せて真剣に考えることもないと思う。ジュンくんは悪い人ではないと思う。それで新郎の資格は十分だ。あとは、私とジュンくんが幸せになるように、互いに知り合い、歩み寄り、理解し合い、将来の家庭生活にそなえればいい。結婚相手に必然性はないのだから。  理想の伴侶はものじゃない。お互いの誠実と努力によりものだと、私は信じている。その過程は机に勉強するより価値があると思う。だって、人生そのものの勉強だから。  高校卒業まですべきことをまとめてみた。  ひとつ。  勉強は、私がジュンくんに魅力的な女性に見えるように教養をつけることが目的。入試のための勉強じゃない。女性として輝きを磨くための勉強をするつもり。本をたくさん読もう。ジュンくんが海外赴任になったら彼をしっかり支えられるように英語も勉強しておこう。  ふたつ。  健康管理。そして、からだ作り。ジュンくんとふたり、いつまで幸せでいられるように健康な躰をつくろう。健康な赤ちゃんを生めるように生理の日は無理しない。排卵日も無理しない。でも、ぐうたらしていてもダメ。悪い男から貞操を守るために、ジュンくんに空手を教えてもらう。  みっつ。  性感帯を開発しよう。だって、夫婦生活のクオリティーを上げるのにセックスは重要ポイントだ。彼が私の不感症を指摘したということは、それを直してほしいということじゃないだろうか。いいよ、ジュンくん。あなたの性欲をしっかり受け入れられる妻になるから。ジュンくんを絶頂に導き、私自身も深いオルガズムに達することができるように、  ということで、──今この瞬間から私の新しい人生がスタート!  
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