セクシーランジェリー愛好会

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 でもそういう世界からどうして「結婚しよう」なんて言う言葉が飛び出してくるのだろうか。私は噂を裏付けする出来事をこの目で見たわけではない。私にとっての現実は、ジュンくんが「結婚しよう」と言ってくれたことだけ。それが私とジュンくんの間の唯一の事実だ。だが「唯一」ということは「一回だけ」ということ。そう、「結婚しよう」と言われたのは一回だけ。なんかの聞きまちがえか、ジュンくんの言いまちがえということもある。そのへんがどうも心もとないのだ。  ジュンくんと噂の女の子が16HRではもう公認のカップルなのだという噂。そんな噂があるなら16HRの生徒に確かめてみればいいじゃないか。本人に直接問い詰めてもいい。でも、それが怖いのだ。だって、だって……。  ──誓ったわけじゃないわよ。でも、結婚しようと言った仲だよ、私たち。そんな状況で彼に実は彼女がいましたなんていう現実が付きつけられたら、私はただのバカじゃない?。すごく怖いよ、自分の愚かさ加減に気づくことって。  結婚の練習期間──。  それは、ジュンくんのお祖父さんの家で再会してからすぐに始まるべきものだった。せっかくの夏休みなのだ。一緒に海にいったり湖に行ったりして、映画とかカフェに行ったりして、お互いのことをもっと知り合うチャンスに溢れているはずだった。なのに、なのに……。現実が暴露されることが怖くて私は何もできないでいる。せめて、「ごめん、ごめん。バレーボール部の練習で忙しくてさあ」なんて、言い訳でもしてくれたら私の心はどんなに軽くなるだろう。
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