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そう言えば彼、膝が悪いんだった。練習ができるような状態じゃないと言ってた。じゃ、何をしているのだろうと疑問に思っていたら、体育館の床拭きをしたり、掃除をしたり、練習試合の日程を決めたりというマネージャーのまねごとをやっているという。誰よりも早く体育館に来て、だれよりも遅くまで残って体育館やボールや道具の管理をしているという。
「え? このみちゃんがどうしてそんなこと知ってるの?」
フィアンセの私が知らないことをどうして? ほんの一瞬だけ嫉妬した。嫉妬と同時に安心感もあった。朝早くから晩遅くまで体育館にいるんだったら、ほかの女の子と遊び歩く時間もないだろうから。
「阿久津先輩に教えてもらったの」
「阿久津さん……」
階段を早足で登っていく憧れの先輩を切ない視線で追っていた乙女の姿がフラッシュバックした。
「え? このみちゃん、ひょっとして……」
「うん、ここンところ、ほぼ毎日会ってるよ」
「毎日って……」
ベッドのヘッドボードに並んで寄りかかり、ショートパンツから伸びる脚を無造作に布団の上に投げ出している私たち。私は午後の日光に透かして吟味していたスケスケショーツを膝の上に置いて彼女に疑念の目を向けた。隣りで敢えて私と視線を合わせようとせず、膝の上に広げた下着を見比べている彼女をじっと見つめる。
バレー部員に女の子とデートする時間なんてあるのかしら? あ、そうか。三年生はもう引退……。納得した。
「私ね、彼の……」
「ん?」
彼女は投げ出された自分の膝に視線を落とし言いよどんでいる。
「いいよ、何でも言って」
私の言葉に曖昧にうなずいてから、ほんの数秒、唇をもごもごさせる。次の瞬間、意を決するような視線が私を射抜いた。
「セフレ、なの……」
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