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仲良しの口から漏れる生々しい言葉に心臓が高鳴り顔が熱くなる。ミツエさんとの出会いがなかったら私の口からは一度も漏れることがなかったであろう言葉。──「セックス」。クラスメイトの口から漏れるたびにいたたまれなくなるような、何か怪しくて、魔法めいて、息苦しくなる言葉。
私のこんなそばにそれを愉しんでいる同級生がいる。平気で口に出す同級生が目の前にいる。モテるけれど奥手である私の住む世界と、おとなしそうで実はエロい仲良しの住む世界のギャップに面食らう。お互い異世界の人間が一つの部屋で仲良く顔をつき合わせているのがとても不思議だ。
「そ、そんなのよくないよ」
私の世界の価値観が通じるかわからないけど、投げかけてみるだけなら許されるだろう。
「どうしてよ? 抱かれている時ってスッゴク幸せなんだから。彼には恋人がいるから、今でこそセフレの立場に甘んじている。でも、あの二人、決してうまくいってるわけじゃないの。私にだって恋人にのし上げれるチャンスはある。先輩のことが好き。先輩も私のこと、気に入ってくれてる。だって、カラダの相性、最高だし……」
「このみちゃん……。私ね、このみちゃんのことが大好きなの。だからこのみちゃんには自分のことをもっと大切にしてほしくて……」
そっと握るこのみちゃんの手はカッカと火照っている。
「大切にしてるよ。自分が大切だから……、エッチするんだよ」
「相手に恋人がいても?」
「でも、カラダの相性は私との方が合っている。私の価値を彼に認めてもらえるのはエッチするときなの。勉強もスポーツもできないけど、エッチでなら彼に認めてもらえる。評価してもらえる。これって、自分を大切にしていることにならないのかなあ?」
このみちゃんとシッカリと視線があった。瞳の色の濃さに驚いた。
そうか。阿久津先輩にとってはこのみちゃんの躰がハイクオリティー商品。それがこのみちゃんの価値……。
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