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「もうちょっと、こうしてて」
無意識のうちに、願っていた。
「もう少しだけ、こうしていたい」
再度明確な意思表示をすれば、髪を撫でてくれていた動きが止まる。
顔を上げれば、彼の双眸とぶつかった。
「お腹空かない?」
「いつもよりも遅めに朝食べたから、まだ大丈夫」
「課題は?きりのいいところまで捗った?」
「後は家で仕上げをすれば終わりそう」
泉夏の答えに、秀王の表情が和らいだ。
「なら、なんの問題もない」
囁かれたかと思うと、宛がわれていた手で頭を引き寄せられた。
互いは限りなく近付き、やがてふたりの唇は重なった。
最初は啄むように。
徐々に吸いつくように。
遠慮がちに割って入ってきた舌先に、くぐもった泉夏の声が漏れる。
「ん……、っ」
甘い声音を合図に、秀王は泉夏の身体を掻き抱いた。
接吻を交わす度に放たれるリップ音と、荒さを増す互いの吐息をより身近に感じながら、行為は自然段階を踏んでいった。
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